2013年6月21日金曜日

【Spin off= M@o】 V・I・P ROOM 【中編:R-18】
















男たちの下品な笑い声
けぶって淀んだ空気
悪趣味な家具

なにがヴィップルームだ

笑ってしまう


本当に_____




「ははっ。なんだこりゃ?最悪のセンスだな
「ここまで悪趣味だと軽蔑を通り越して尊敬しちまう」

「え~~?そりゃないぜぇー
「わざわざマオ様のために用意したんだぜェ?気に入ってくれると思ってよォ」


眉をくっとあげて挑発するように言ってやると
男たちは一斉に嗤い始める。その馬鹿笑いがひどく耳障りだった



「___で、あんたら俺に一体何の用なわけ?」


「ん?___ああ、ちょっとした情報を耳にはさんでよぉ
「そのことを確認したくてな」




「あんた、『珍しいペット』を飼ってんだってな」

「・・・・」


「王様みたいにいばってると思ったらさぁ、まさかホントにそういうアソビをしてるなんてねぇー
「しかも男と。」




「はは!やっべーーーなぁ!天下のマオ様がそんなアブノーマルな嗜好の持ち主だったなんて!
「大学の奴らにバレたら・・・・どうなっかなぁ?超スクープじゃね?みたいな」

「お前、自分が有名人なの忘れてた?
「パパやママががんばって帳消しにしてくれてるみたいだけどさ

「誰が見てるかわっかんねぇよなぁーーwこの世の中はさぁ」




「何故あんたがそれを知っている」





「んーー、それはまあ・・・・タダじゃァ教えらんねぇな」

「・・・・何が欲しいんだ?金か?いくら欲しいんだ?」

「___さっすがマオ様。話早いじゃん。」


「でもさぁ、俺が欲しいのってーお金じゃないんだぁーーー」
「だって、金ならこれからいくらでも吸い上げられるじゃーーん?」

「へぇ?じゃあ何が欲しいんだ?」


デレクが言っているのは俺とアイリスの関係に違いない
なぜあんたが俺たちのことを知っている?

勿体ぶって話すデレクの調子に、次第に苛々してきてしまう
デレクが優位に立っているこの状況が気に食わない


そんな俺の様子を知りもせずにデレクは間延びした声で続ける





「んーーー欲しいってかー___俺も体験してみたいナーー
「そのアソビ」


「・・・は?」


「楽しそうな遊びしてるよなぁーーホント。さっすが金持ちは考えることちげーーよwwwwww
「イカれてるよなwマジで。」




「王様ごっこっていうの?俺もやってみてぇなー。王様になってみたいなァ~
「だからさぁ、マオ様。俺の召使いになってよ」


デレクはそっと俺の傍までにじり寄ると顎を掴んで引き寄せる

「たっぷり可愛がってやっからさァw」




「てかーーー男とヤるとハマるらしいじゃん?俺、興味あるんだよね~~
「お前もハマったクチだろ?相当ヤりまくってるらしいもんなァ」

「・・・あんた、ストレスでもたまってるわけ?」

「あ~?」

「セックスで解消したいんだろ?てか、あんたゲイなわけ?それともバイか?
「マイノリティはストレスが溜まってたいへんだな」


「・・・はぁ?w
「ゲイとかwwwんなワケねぇだろwwww」




「ただの興味本位だよ
「一度ヤってみるのも人生ケイケンじゃ~~~ん?みたいな?w」


そう言ってデレクは嗤った。
そのけたたましい笑い声が部屋に充満する

飢えて乾いた瞳はただただ愉快そうに歪んでいて____


遊びなのだ。
こいつにとって、ヒトも、セックスも___すべて

空虚で退屈な毎日を埋めるための消耗品

別に俺じゃなくたっていい
誰でもいい

ただ搾取できそうなのが俺だったというだけ____






扉は開かない




助けは誰もこない____

















「クククク・・・・・」





「ククク・・・・・ふ、はははははは!!」



「・・・・は?・・・・何がおかしいわけ?
「いきなり笑っちゃって・・・・頭イカれちまったのか?」

「いや・・・、違うんだ・・・俺はただ・・・愉快で・・・・・


「ははは!ホント、あんた達って・・・バッカじゃねぇの
「そんなんで俺を脅してるつもりかよ」




「あんた達の言っていることはただの憶測でしかない
「自白を試みようとしたのかはわからねぇけど・・・

「証拠も何もないんじゃ話になんねぇな」




「は・・・?証拠、だと?あんじゃねーかよ!」

「どこに?」

「・・・・っ・・・・見たっていう証言を・・・・デレクが聞いたって・・・・」

「そんなもの、どうとでもなる」


「ば!待てよ・・・!言いふらしてもいいのか!?
「困るのはマオ、お前だろ?いいのかよ。俺たちに口止め料ケチってよぉ」

「このままにしておくと
「ちょっとした瞬間にポロッと口が滑っちまうかもしれねぇぜ?」



「____言えば?」


「だってさァ____
「一番困ったことになんのは、あんたたちだぜ?」




「俺のパパとママってさァ、すっげー過保護なんだよねぇーー
「俺のためなら、もうナニしちゃうかわっかんねぇってくらい

「だからー屑の一人や二人、消すくらい簡単にできちまうんだけど___」


「ははっ、あんた達って相当の命知らずなんだなァー?」




「・・・・っ」

「な・・・そんなの・・・どうせハッタリだろ・・・!」


「はは!ハッタリだって思うなら好きにしたらいいだろ?
「その情報を記者にでもなんでも売ればいい。ま、どうせ取り合ってくれねぇだろうけど?」




「逆に名誉棄損で訴えてやるよ」

「なっ・・・・」

「裁判は俺が勝つだろうなァ。あんたら、まともな後ろ盾もないだろうし
「そうなったらあんたたちは名実ともに詐欺師の仲間入りだ___


「ははっ!転落人生じゃねぇか!かわいそうに____」






「あんたたちの人生なんて、俺が本気出せばいくらでもめちゃくちゃにしてやれんだよ」










「な・・・何言ってんだよ・・・オマエ・・・・」

「裁判だなんて・・・そんな・・・」




「おい・・・!デレクお前・・・・!」





「待て!逃げるなよ・・・!」

「オイッ・・・・・!」

「お前から提案したんだろうが!待て・・・!この・・・・!」







ばたばたと忙しない靴音を響かせて男たちは立ち去った
リーダー格のデレクさえなんとかしてしまえは簡単だろうとは思っていたが
こうも容易いとは・・・

デレクを追いかけ、われ先へと出入り口に殺到する男たちは___滑稽以外のなにものでもなかった





そもそもこうやって俺を恐喝しようとすること自体間違っているのだ


俺の利用価値が下がるようなことを両親が赦すはずがない

彼らに知られたら、デレク達はこの街にいられなくなるか・・・
もっとひどい仕打ちを受けるだろう

相手が俺でよかったな


しかし、こうなるであろうことを予想できなかったのだろうか?

ホント、頭が悪い連中だ






本当に頭が悪い


俺はあの時ちゃんと口止めしておいたのに。
素敵なプレゼントまで贈って、あんたの意に沿うようにしてやったのに

「誰にも言わない」と言っていたのに



誰にも言わない、なんて言葉、誰が信じるか
そういうやつに限って裏切る。
人は、すぐに裏切る


皆、俺のような者が暗がりへ堕ちていくことを手ぐすね引いて待っているのだから








































「マ、マ、マ・・・・マオ、く・・・・ん」















俺の姿を見つけると、セージはおどおどと瞳を彷徨わせて項垂れた
俺はそのやたら細い腕を掴むと、人気(ひとけ)のないところまで誘う

入り組んだ路地を闇が濃い方へ進んでいって、少し広い場所へ出たところで腕を離す

「あ・・・・な、な、な・・・・なに・・・・」

震える声、青ざめた唇
セージは明らかに怯えていた。




「___あんただろ?デレク達に俺の情報をリークしたのは」

「・・・・っ!」

あいつらが俺たちの関係なんて知っているわけがない

誰も知らない
知るわけがないのだ

あの時俺たちのことを見ていたセージ以外は____


「よくも俺の情報を売ってくれたなァ」

「あ・・・・・・・・ぼ、ぼ・・・ぼく・・・・!」

軽く問い詰めてやるとセージは顔を伏せる。唇をわななかせ、瞳を潤ませて
今にも泣き出しそうな顔に苛立ちを覚える

「なんだァ?その顔。」




「まるで傷ついてるみたいな顔しやがって・・・・
「そういうイイヤツぶった態度がムカつくんだよ!

「この偽善者が!」




「・・・っ!」

「あんた言ったよなぁ?『口止めなんていらない。こんなのなくても誰にも言わない』って」
「なのに、あんたは俺たちのことをあいつらにしゃべった。俺を裏切ったわけだ」

「あ・・・あ・・・・」

「最低だな、あんた。」

「いつもそうやっていろんな奴を裏切ってきたんだろう?人畜無害そうな顔して偽って。
「とんだ屑野郎だよ。この蛆虫が!」

「ううっ・・・・・」


「ご、ご、ご、ごめ・・・・・・なさ・・・」

「あ?」





「ご、ご、ごめん・・・・・・ご、ご、ご、ごめ・・・・なさ・・・・・・・」










「謝って済むんなら警察いらねぇだろうが!!
「この滓が!!」


「っ・・・・!」


瞳を潤ませて謝罪を繰り広げるセージを
俺は思い切り殴りつけた




腹を踏みつけ、鳩尾を蹴り、セージをいたぶる

この俺が!マオ様が!セージのようにチンケな男に裏切られていたのか?
この馬鹿で愚鈍で卑屈な男に!
純情そうな顔をして、その裏で舌を出していたのだ

____赦せない

怒りが後から後から湧いてきて止まらない
セージを嬲らずにはいられない

「考えなかったのか?こうなるだろうってコト。
「想像できなかったのかァ?!」

「あ、っ・・・・・ぐ、うっ・・・・・」

「頭が弱い弱いとは思っていたけど、まさかここまで弱いとはなァ?
「脳みそちゃんと使わねぇともったいねぇだろうが!この低能!!」




「てか、脳みそ入ってんのかーー?


「ははっ!俺が確認してやるよォ」




俺はそうやって口の端を歪め____セージの髪を掴んで頭を固定すると
勢いをつけてそのまま壁へ打ち付けた




「がっ・・・!あっ・・・!」




「や゛、め・・・・!」


「ああ?なんだってーー?きっこえねーーなァ?
「もっと大きい声で言ってくれませんかあーーーーー?」

必死でもがこうとするセージの髪を抜けるほど強く掴んで、何度も何度も壁に叩き付ける
赤くどろりとしたモノがぽたりと地面に散る
そのあたたかさを指に感じながら、俺はただただ嗤っていた

馬鹿でかわいそうで無様なセージを嬲ることが愉しくて____


「はははっ!ほらほらァ?ちゃんと言わねぇともっともっと血ィ流すことになるぜぇ?」

「このままだと死んじまうかもなぁ!あはははは!」



「うっ、・・・・ふ・・・・」






「ご・・・め・・・・・なさ・・・・・・

「め・・・・な、さ・・・・・!」




「は・・・・?あんた・・・・泣いてんの?」

「う・・・・う、・・・・・う・・・・」


唇を震わせて嗚咽を漏らし始めたセージを見て呆れてしまう

「・・・何泣いてんだよ?
「泣くくらいなら最初からやんじゃねぇよ!!

「テメェは俺を裏切ったんだぞ?
「そんなあんたに泣く資格なんてねぇだろうが!!」


「ゆ、ゆ、ゆる・・・・して・・・・・た・・・・たす、け・・・・・」


「あぁ?」




「赦さねぇよ。あんたが生きてる限り、一生、死ぬまでな。」


「てか___死ねよ。


「あんたみてぇなカス、生きてる価値なんてねぇだろ?

「どうせ、あんたが死んでも誰も悲しまねぇんだからさァ」




俺はそう言い放つと、またセージの頭を思い切り壁へ打ち付けようとした____


その刹那___










「もう、いいでしょう?

「もう、やめてください。陛下」










なんで_____

なんであんたがここにいるのだ
あんたは俺がちゃんと繋いでおいたのに・・・・

なんで

なんで・・・・・・!









アイリスは俺を羽交い絞めにして制止させ、セージから引き離すと
すぐに救急車を呼び、血みどろになったセージを抱きかかえた。


「なんとなく嫌な予感がしたので追いかけてきて正解でした。・・・・まさか、こんな・・・・
「もっと早く来るべきでした」

「なんで・・・・あんた・・・手錠・・・・」


「あんな玩具の手錠。すぐに外せます」

「は・・・?なんだよそれ
「あんた、今まで外せるのにわざと捕まったままでいたわけ?___とんだ変態だな」

「そんなことはどうでもいいでしょう?」


「_____あ?」




「セージさん、セージさん・・・大丈夫ですか?」


「う・・・・・う、う・・・・」

「今救急車を呼びました。しっかりしてください」

「ア、ア・・・アイ、リス・・・く・・・・」

「そうです。俺です。ここにいますよ。」




セージを抱きかかえ、優しげに話しかけるアイリスは
まるで愛するものを助けにきた正義のヒーローかなにかのようで____

虫唾が走った

「あんたさぁ・・・・・何してるわけ?」




「なんで・・・・・何で止めてんだよ・・・・・っ!」


「悪いのは全部そいつじゃねぇか!!
「俺たちの秘密をデレクなんかにベラベラベラベラしゃべって!!

「ちゃんと言わないって約束したのに!こいつはそれを破ったんだぞ!?!
「口止めなんかなくても言わないなんて言ってたのに。とんだ嘘つき野郎だ!!そいつは・・・・っ!!

「俺たちを裏切ったんだよ!!!」




「俺は___俺を裏切ったやつは絶対に赦さねぇ。一生。死ぬまでな___



「・・・おい。さっき連絡した救急車___アレ、『間違い電話でした』っていってとりやめにさせろ。」

「・・・・・・何を、言っているんですか?」


「セージには報いを受けてもらう。こんなの当然のことだろ?」

「そんなことをしたら死んでしまいます」

「んなこと知るかよ!!」




「___なんだァ?!あんた、俺の言うことがきけねぇのか!?
「これは命令だ!!」





「っ・・・・・・」







「・・・・きけません

「そんな命令には、従うことはできません」




「・・・・・は?」





「あんた・・・・俺の命令に背くのか・・・・・?」






なんで?



なんで

なんで

なんで

なんで

なんで

なんで




「あんたも・・・・俺じゃなくて、そいつを選ぶのか?」





「え・・・・・・?

「陛下・・・・・・・・?」













「陛下・・・っ!」



























俺にはアイリスがいる

俺が命令すればなんでもいうことをきく
可愛い可愛い俺の奴隷

俺を、俺だけを受け入れる
俺だけの玩具

俺のためだけに存在する
俺だけの・・・




そう思っていたのに



アイリスは俺ではなくあの男を選んだ
あの馬鹿で愚鈍で卑屈な男を

あんたは俺を助けなければならないのに
あんたの一番は俺でなければならないのに

あんたは俺のことが好きなのだから
俺のことを何よりも優先させなければならないのに・・・!


なぜ・・・・






どうして、いつも俺は選ばれない











「あれ・・・?マオくんじゃないか」





「こんな時間にこんなところで何をしているんだい?」

「・・・散歩です」

「そうなんだ。奇遇だねぇ。先生も夜の散歩を楽しんでたところだよ」

「そうですか」


「・・・・大丈夫?」

「え?」

「いや、なんだか・・・元気がないように見えたから・・・心配になっちゃうよ
「・・・何か、悲しいことでもあったの?」


「・・・・」









「___慰めて、あげようか?」











「・・・先生・・・・・・」






俺は男の首にしがみつくと、煙草の匂いがするその広い胸に顔をうずめた




















ちゅくちゅくと唇を重ね、唾液をかき混ぜる淫蕩な音が男の部屋に響く
ねっとりと咥内を舐めまわす男の口づけに応えてやりながら、俺は男の躰をまさぐってやる

筋肉のふちを撫で、腰をさすり___既に熱く高まっている局部をそっと触れ、揉みしだいてやると
口づけが更に深くなる




「あっ・・・」

舌を含み、顎を舐め、ソファへ押し倒し____
熱い吐息を隠しきれない男は俺の服を荒々しい手つきでたくし上げ、やわらかな肌を犯した




自身の猛ったモノをこすり付けながら
男は俺の腹を撫で、ささやかなふくらみを掴み、乳首を揉む


「・・・・・んん・・・、ま、待って・・・・

「やっ・・・・急に・・・・・」


甘く喘いでやりながら俺は先を促す

こんな戯れなどどうでもいい
やるのなら早くやればいい

早く気持ちよくなりたい
早く欲望と快楽でいっぱいになってしまいたい


もうどうだっていい

愉しいこと以外は、すべて





「・・・・ごめん、怖がらせちゃったかな?
「君があまりにも可愛いからつい・・・・ごめんね」

あえて制止の声をあげていたのに
鈍感で馬鹿な男はそれを本気と取ったのか、俺を抱き起し、頭を撫ぜた。


「ううん・・・・でも、先生・・・随分慣れてますね・・・」
あんなのポーズに決まってんだろうが
何、まに受けてんだよ

「そんなことないよ
「マオ君に馬鹿にされないよう、これでもいっぱいいっぱいなんだけどね」

「先生ったら、・・・・・可愛い」
ああ、心配しなくていいぞ?もう馬鹿にしているから
少し触ってやっただけであんなに欲情するだなんて滑稽の極みだな
欲求不満の豚が

「ふふ、ありがとう。でもマオ君の方が可愛いよ?
「あんなにあられもない声を出して。君はいっつもあんなに甘えん坊なのかい?」

「先生だからですよ



「だっていつもは____」





「もっとキケンな遊びをしているから」


「___危険な遊び?」

「そう、ちょっぴりハードで、キケンな、ね」


こんな戯れなんかとはわけが違う

むしゃぶりつけたくなるほどの色香を湛えたあの肉体を、いたぶって、いたぶって、いたぶって____

頭の芯が痺れるような愉悦、刺激、欲情
半端なセックスなんかよりももっともっともっと興奮してしまうほどの・・・



「へぇ・・・・」




「・・・そうなんだ

「君そういうの、けっこうイケるんだ」


牽制の意を込めて睨みつけてやったのに・・・・男は何故か____妙に嬉しそうに笑った




「なーんだ。そうだったんだ
「そうだったんだねぇ

「それならもっと早く言ってくれればよかったのに」

「・・・え?せん、せい・・・?」

「なんとなく君とは趣味が合いそうだなぁとは思っていたけど
「まさかそうだとは思わなかったなぁ」

「は?どういう意味ですか?」

男はまるで歌うかのように紡いでいく。その要領を得ない意味不明の言葉の数々に・・・・
次第に苛々してきた俺は単刀直入に尋ねる

「何を言っているのかわからないんですけど。」


「はは_____わかるよ?


「これを見ればね」






「っ・・・・・!

「それは・・・・」



男は優雅に立ち上がり、サイドボードに置かれていた
鞄から道具を次々と取り出して、俺に示した

ずらりと並んだソレは・・・
乗馬鞭に拘束具、貞操帯、ボールギャグ、手錠・・・・


それらすべて___豚を調教するためのものだった





「先生はねぇ、これで可愛い男の子に調教を施すのが趣味なんだ

「でも、これがなかなか・・・させてくれる人がいなくてねぇ
「欲求不満だったんだよ

「でも君もそうだったなんて___本当に、嬉しい誤算だよ」




「は・・・?先生、何を言っているんですか?」

「何って___君もそうなんだろう?

「たっぷりいじめてあげる。希望があればなんだって言ってくれていいよ?
「どうしてほしい?どこをいじめてあげようか?アヌス?尿道?」

男は嬉しそうに鞭で空を切る
その鋭い音に躰が硬直してしまう。SM専用の鞭は音だけが大きくて痛みが少ないものもあるが___
俺の嗜好はいたってノーマルなので率先して当たりたいとは思わない
こんなプレイ、望んでいない


「うわ・・・・先生そういう趣味があったんですか?
「申し訳ないんですけど・・・生憎、俺にはそういう趣味がないんです。すみません」

顔を顰めて後ずさりをすると
男の腕がにゅっと伸びてきて____俺の腕を掴んだ



「いまさら逃げようたって、そうはいかないよ?」





「君は俺についてきたんだからさぁ、俺のエサになってもらわないと困るんだよ」


「大丈夫。だんだん気持ちよくなってくるよ
「痛みなんてすぐになくなるよ

「だいじょうぶ。ちゃーーんと有意義な時間にしてあげるからさあ」




興奮しているのだろうか、鼻息も荒く俺のそばに近寄る男。
その常軌を逸した目の色と、痛いほど強く握られた手にぞっとする

こいつ・・・・本気で俺を調教する気なのか・・・?


自分がする方なら好みだが、されるだなんて
不愉快でしかない

無様な姿を晒すだなんてプライドが許さないし
このレベルの男に主導権を握られるだなんて
死んでも嫌だった




「てめぇ・・・調子こいてんじゃねぇぞ
「誰がんなことするか。気色わりぃんだよ!」

渾身の力を込めて腕を振りほどくと、男を睨みつける


「え・・・?マオ、くん?なにを言って・・・・・」

「俺はあんたの好きなお人形とは違って、痛いのは好きじゃないっつってんだよ!
「このド変態が!好き者は好き者同士よろしくやってろ滓!!」

思いつく限りの罵詈雑言を吐き出し、男を罵倒すると
男はため息をついて肩を落とした


「はぁ・・・・」





「もう・・・・マオくんったら_____

「ご主人さまに乱暴な言葉を使っちゃだめでしょ」




そう言うと___何を思ったのか、男は俺にむかって鞭をふるった




いきなりの攻撃に身動きが取れず、俺はバランスを崩す____
そこに容赦なく蹴りが飛んでくる


「がっ・・・・・!」


目の奥に火花が散ったかのような痛みが走り
俺はくぐもったかのような声をもらして床に崩れ落ちた




そこに男が覆いかぶさってくる

キスをしようとでも思ったのか。咥内を無理やり指でこじ開けられ、舌をねじ込まれる___
その舌を思い切り噛んでやると口の中が鉄の味でいっぱいになった

男が痛みでひるんだ隙に逃げだそうともがくが
頬を思い切り殴られ、思考が赤く滲む。唇が裂け、血が溢れ出す

「っ・・・・・あ゛・・・・・・っ」

俺の抵抗が弱くなったのを見て、男は俺のベルトを外し、ズボンをずり下げる
腰を浮かせ、臀部を露出させると・・・・・・そこに触れた

「や・・・め・・・・」


何をしようとしているのか理解した俺はその手から逃れようと激しくもがくが___
今度は腹に拳が飛んできて_____何度も何度も殴打される

みりみりと躰が裂けるような痛みに、無様にのけぞる
頭が真っ白になってしまって、痛みから逃れること以外何も考えられない




「まったく。可愛がってほしいのはわかるけど・・・君はお行儀を知らなすぎるよ
「やっぱり一度種付けしてあげないとだめみたいだね」

「ぐ・・・あ・・・・・」


「気持ちいいかい?
「愉しいかい?

「ははは・・・もっともっと気持ちよくしてあげるよ・・・・」





男は甘く囁くと
むき出しになった俺の窄まりに____ぎちぎちに固くなり、ぬるぬると粘液を滴らせている自身をこすりつける

「い、やだ・・・・・」

思わずそう呟いてもがこうとすると___男は俺の首を掴んで自由を奪う

男の指が喉に食い込み、焼けつくような痛みで締め上げられる
俺は喘ぐようにくぐもった吐息を漏らし、手をじたばたと掻き毟っていた
目から生理的な涙があとからあとから零れ落ちる。

その焼けつくような痛み、痛み、痛み、痛みに_____


ひとつの記憶が閃光のようにひらめいた




ゆっくりとナイフが近づいてくる。
___の爪が首に食い込み、ひどく苦しくて悲鳴をあげそうになる。


声が出ない


くるしい・・・っ

助けてほしいのに哀願することすら許されない

つめたい殺気。
キリキリと締め上げられる喉。
歪んだ笑みには
ただただ自分に向けられる____





ラベンダーからの、憎悪


苦しい・・・・苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい・・・・!





ころされる


俺はこのままでは、この男に・・・


ラベンダーに、・・・・・ころ、sれるあvdfはうぇいあp、:ぁ「えw;あ」あ。があえtげあ;;pgか:wまlがあ:・;あああああげあ、;、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ



















































走って、走って、走って、走って、もうどこまできたのか___


俺は立っていられず
思わずその場になだれこむようにしてしゃがみ込んだ

どこもかしこもびりびりと痛む。
萎えそうになる躰を叱咤して、しゃにむに逃げ出してきたが

もう限界だった


こうしている間にも追いかけてきているかもしれないのに

影が、物音が、暗闇が
俺を追いかけているように感じてしまう


逃げなくてはいけないのに


逃げなくてはいけないのに・・・・・体が思うように動かない
頭がぐらぐらと痛み、吐き気がする

苦しい

何も、考えられない


痛みを鎮めるためにうずくまると
腿に固い感触が当たる。その正体を探るためにポケットをまさぐると・・・・冷たい金属の淵に指が触れた

携帯電話だ





そうだ・・・・・


これで助けを呼ぼう
叫んで、縋って、脅して、助けてもらおう

そうすれば、俺は救われる
ここから逃げ出すことができる


俺は痛みでだるさを覚える腕を懸命に動かして
携帯を握りこむと、通話ボタンを押そうとして_____ピタリと制止した





でも、誰に・・・?

誰に助けを呼べばいいんだろう?



指が動かない


俺が自分の手で傷つけたカモミール?
俺よりセージを選んだアイリス?

真っ先に思い浮かんだ顔を打ち消してしまうと
もう、誰も思い浮かばなかった


指が動かない
指が動かない
指が動かない
指が動かない
指が動かない
指が動かない


誰が俺なんかを助けてくれる?

いままで散々人を傷つけて
塵屑のように扱って、軽蔑して、罵倒して、いつも自分のことばかり___

ああ_____



こんなやつ、
誰も助けてくれやしねぇよ







____そうだ


やっと気づいたよ
俺には誰もいないんだって

俺は、ひとり なんだって



幸福だと思えないはずだ

誰からも求められていないのだから

愛されないはずだ

親さえも俺を顧みないのだから


誰からも愛されず、誰からも選ばれず、誰からも求められず、誰からも、誰からも、誰からも・・・・



死んだ方がいいのは俺だ

生きている価値がないのは俺だ



身体が重くなる。真っ黒な泥になる
虚脱感に支配され___もう、指先ひとつ動かない

石になりたい
石になりたい


このまま石になって、砕けて消えてしまえたらいい


心からそう思うのに___






ただ、機械みたいにぽろぽろと___

目から水が毀れつづけた

































ppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppp























「陛下。先ほどはすみませんでした。陛下のお気持ちをもう少し汲みとってさしあげるべきでした。

「今どこにいらっしゃるのですか?
「居場所を知りたいのでGPS機能をオンにしてください

「このままですとお迎えにあがれません」


『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』






「・・・陛下・・・・・?

「どうかされましたか?」


『・・・・・・・・・・・・・・けて・・・』


「え?」






「たすけて・・・・」






「たすけて・・・・・・・・っ」


「たすけて・・・たすけて、たすけて・・・たすけて、たすけて・・・・・・
「アイリス・・・・・アイリス・・・・!たすけてっ・・・・・!」





「たすけて・・・・・・・・たすけてよぉ・・・・・・・」







何かを必死に叫ぶアイリスの声がスピーカーを震わせる

それに手を伸ばすかのように____



俺はこの時初めて____

心から他人に縋った




>>next






0 件のコメント :

コメントを投稿